タロットと生命の樹

フランスの神秘主義者、エリファス・レヴィはタロットの札構成が古代ユダヤの神秘思想カバラの教義に基づいているという見解を示しました。大アルカナの２２枚がカバラ思想の中核を作り上げている２２文字のヘブライ文字に関係していると主張したのです。

カバラの神秘思想を図式化した生命の樹も、

• ２２の径（パス）に大アルカナが
• １０の天球（セフィロイト）に小アルカナの１から１０までの数値が

それぞれ対応するとして各アルカナをカバラ神秘思想と結びつけた新しい解釈を生み出しました。神への進化の道を示す生命の樹とタロットを結びつけることで、７８枚のタロットを使って、宇宙の周期と変容の物語を表現しようと試みたのです。

レヴィは古代エジプトの「死者の書」からもひらめきを得て

• ヘブライ文字の最初の「アレフ」に大アルカナの１番札である「魔術師」を当てはめ
• 大アルカナで０番目の札である「愚者」を２１番目の文字「シン」に当てはめました。

これは人生の旅の結果、神による判別を受け

• 神として楽園に生まれ変わる
• 修行のために再び現世に生まれ変わる

という古代エジプトにおける死生観を基にして生まれています。

つまり、大アルカナの２０番目の札である「審判」が神による判別の儀式を表していると考え、

• 人生の旅の結果、人が神として生まれ変わったのなら、大アルカナのラストのカードは２２番目の「世界」となる
• 人生の旅の結果、神への生まれ変わりが失敗した時は、再び現世での修行を与えられ、大アルカナのラストのカードは０番目の「愚者」となる

というように、古代エジプトにおける死生観がタロットカードを通じて表現されているのです。

カバラ神秘思想を通じて、生命の樹やヘブライ文字を取り込み新たな解釈を得たタロットカードは世界に広まっていきます。その拡大に大きな影響を与えたのはイギリスのオカルティスト達でした。

多くの魔術団体が存在しましたが、その中でも特に有名な「黄金の夜明け団」は創設者でもあるアグレガー・メイサーズはタロットを生命の樹や占星術と融合させ、ゴールデンドーンタロットと呼ばれているカードを作り出しました。そしてそのカードを用いて魔術修行における瞑想を行いました。

同じく「黄金の夜明け団」に所属していたダイアン・フォーチュンはカバラの生命の樹とタロットカードの結びつきを解説した「神秘のカバラー」を発表しました。当時はタロットに関する研究は各団体の極秘情報とされ、公にはされていませんでした。ダイアンの著述は一般の人々にもわかりやすく、現代の研究家がタロットと生命の樹の結びつきを研究するにあたっての重要な資料となっています。